2018.12.31 Monday
「な……」
「立ってる場所が悪かった……みたい」
妖精さんの質量はあるのかないのか不明であるが、一度に大量に降りかかれば、ヒナセくらいの体格と体重なら、押し倒すことは可能なようである。
カワチはあっけに取られてヒナセたちを見ていたが、思いだしたように一瞬視線が彷徨って、それから取り繕うように咳払いをした。
「あー……とりあえず、全艦隊状況を報告せよ。繰り返す。全艦隊、状況を報告せよ」
「……あとでおぼえてろ」
ヒナセは鳳翔に支えられながら立ち上がり、カワチを睨めつけた。
「いやいや、笑ってなんかいませんよ、司令官」
言ってるカワチの口元は、微妙に歪んでいる。ヒナセは盛大に顔をしかめて、口の中でチッと舌打ちした。
「就寝時の脳内再放送も禁止ね」
「無茶言わんで下さい」
ここで助け起こそうと手なんか出そうものならヒナセの逆鱗に触れるのを重々理解しているカワチは、鳳翔に羨望のまなざしを向けるだけに留めておいた。その鳳翔は、今カワチがヒナセに対して心からやりたいことをやっている。
「……どこか怪我とかしてないですか?」
カワチは、自分の心うちを悟られない程度にさらりとした声を出した。
「大丈夫。鳳翔さんが支えてくれたから。あまりに急だったんで変に踏ん張ったりしてないから、捻ってもいないよ」
鳳翔に半ば抱きかかえられるようにしてヒナセは立ちあがり、シワを伸ばすような仕草で第一種制服のボトムの表面を叩き払うと、制帽を目深にかぶりなした。
「艦同士が接触とかしてないか現況報告を急がせて。各艦の見張りに、自分の周囲の艦がどうなっているか、確認させ――」
「てーとく、神通さまより緊急です!」
ヒナセが指示を言い終わる前に『神通』付き妖精さんの声が飛んできて、艦橋内が一瞬ザワっとどよめいた。
「報告どうぞ」
ヒナセは先を促した。まるで「お茶でもいかが?」くらいのトーンだった。
「立ってる場所が悪かった……みたい」
妖精さんの質量はあるのかないのか不明であるが、一度に大量に降りかかれば、ヒナセくらいの体格と体重なら、押し倒すことは可能なようである。
カワチはあっけに取られてヒナセたちを見ていたが、思いだしたように一瞬視線が彷徨って、それから取り繕うように咳払いをした。
「あー……とりあえず、全艦隊状況を報告せよ。繰り返す。全艦隊、状況を報告せよ」
「……あとでおぼえてろ」
ヒナセは鳳翔に支えられながら立ち上がり、カワチを睨めつけた。
「いやいや、笑ってなんかいませんよ、司令官」
言ってるカワチの口元は、微妙に歪んでいる。ヒナセは盛大に顔をしかめて、口の中でチッと舌打ちした。
「就寝時の脳内再放送も禁止ね」
「無茶言わんで下さい」
ここで助け起こそうと手なんか出そうものならヒナセの逆鱗に触れるのを重々理解しているカワチは、鳳翔に羨望のまなざしを向けるだけに留めておいた。その鳳翔は、今カワチがヒナセに対して心からやりたいことをやっている。
「……どこか怪我とかしてないですか?」
カワチは、自分の心うちを悟られない程度にさらりとした声を出した。
「大丈夫。鳳翔さんが支えてくれたから。あまりに急だったんで変に踏ん張ったりしてないから、捻ってもいないよ」
鳳翔に半ば抱きかかえられるようにしてヒナセは立ちあがり、シワを伸ばすような仕草で第一種制服のボトムの表面を叩き払うと、制帽を目深にかぶりなした。
「艦同士が接触とかしてないか現況報告を急がせて。各艦の見張りに、自分の周囲の艦がどうなっているか、確認させ――」
「てーとく、神通さまより緊急です!」
ヒナセが指示を言い終わる前に『神通』付き妖精さんの声が飛んできて、艦橋内が一瞬ザワっとどよめいた。
「報告どうぞ」
ヒナセは先を促した。まるで「お茶でもいかが?」くらいのトーンだった。
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