2021.09.09 Thursday
9/12開催のマリみてオンリー【子羊たちの運動会】で、出町柳文庫さん(主宰:特急さん)の聖蓉R18合同誌に参加してます。
…でまぁ、何か盛り上がることしてぇなぁって思いまして。
合同誌の参加者・そうしゃいっそうさん(https://twitter.com/nanasigotesuto)に「聖蓉で見たいものを言うが良い」とお題を4つ、絞り出して頂きました。
ご本人にはまだ言ってないんですけど(こいつは…)、可能ならばイベントまでの毎日、ワンドロ的に1200字程度のSS(ほんとの意味でのSS)を投下できたらな…って企画です(あまりにも他力本願だが。
では、1題目。
『ドライブする聖蓉』
で、ございます。
さ、どうぞ。
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…でまぁ、何か盛り上がることしてぇなぁって思いまして。
合同誌の参加者・そうしゃいっそうさん(https://twitter.com/nanasigotesuto)に「聖蓉で見たいものを言うが良い」とお題を4つ、絞り出して頂きました。
ご本人にはまだ言ってないんですけど(こいつは…)、可能ならばイベントまでの毎日、ワンドロ的に1200字程度のSS(ほんとの意味でのSS)を投下できたらな…って企画です(あまりにも他力本願だが。
では、1題目。
『ドライブする聖蓉』
で、ございます。
さ、どうぞ。
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東へ向かって、赤いブーブーを走らせる。助手席は専用席で、そこに座るべき人が、お行儀良く、でもほんの少しだけ足が窮屈なの……といった風情で座っている。
ブーブーの色は、助手席の人の色。
赤い薔薇。そう、紅薔薇《ロサ・キネンシス》
——ま、『元』ではあるのだけど……という私は白薔薇《ロサ・ギガンティア》だったんだけど。
そんなことを考えながら、チラリと助手席の人を盗み見る。
全開にした窓から入る風に、黒い髪がなびく旗のように揺れ動き、白いうなじが見え隠れしていた。明るい暖色の夏ブラウスは涼しげなのに、首元にはうっすらと汗が張り付いている。
「ゴメンねぇ……暑いでしょ?」
思わず言葉が口をつく。
「あら? どうしたの?」
やや低めのしっとりとした声が、ほんの少し可笑しそうな響きを乗せてに返ってくる。そんな分かりきったことを今さら訊くなんて……と。
冷暖房完備のブーブーは、夏熱くて冬は冷たい。それでも私たちのお気に入り。他の子に乗り換えようなんて、これっぽっちも思っていない。
「二人でならどこまででも行けちゃうよね」
「そうねぇ、貴女はこの子とならどこへでも行っちゃうわよね」
軽い調子で返されて、思わず首を引っ込める。
「ま……まぁそれは……うん、そうねぇ……じゃなくて、私はよーことどこまででも行っちゃいたいの」
冗談だって分かっているから、こっちも軽い調子で言葉を返す。「うふふふふ……」と微かな笑い声が耳を撫でていった。
きっと今、君はこっちを見て、笑ってくれているんだろうね。
その顔を見つめていたいなぁ……なんて、思っているけど、実行したら「危ないから前を見なさい!」って叱られちゃうんだ。……ちぇ、ずるいなぁ蓉子だけ。
「聖」
不意に呼ばれてハッとする。
「疲れたら言ってね。運転、換わるから」
優しくてあったかい声が耳をくすぐった。思わず口元が緩んじゃう。
「うん。でもまだ大丈夫」
今日の目的地はそんなに遠くはないけれど——
——ブーブーに乗って二人でなら、きっとどこまでも行っちゃえるって。
ほんのちょっぴりアクセルを踏み込む。フオン……と吐息のようなエンジン音が聞こえて、ブーブーは緩やかな傾斜を登りはじめる。
切り通しの空が行く先に伸びて、私たちの行くべき方向を指し示している。
ブーブーの色は、助手席の人の色。
赤い薔薇。そう、紅薔薇《ロサ・キネンシス》
——ま、『元』ではあるのだけど……という私は白薔薇《ロサ・ギガンティア》だったんだけど。
そんなことを考えながら、チラリと助手席の人を盗み見る。
全開にした窓から入る風に、黒い髪がなびく旗のように揺れ動き、白いうなじが見え隠れしていた。明るい暖色の夏ブラウスは涼しげなのに、首元にはうっすらと汗が張り付いている。
「ゴメンねぇ……暑いでしょ?」
思わず言葉が口をつく。
「あら? どうしたの?」
やや低めのしっとりとした声が、ほんの少し可笑しそうな響きを乗せてに返ってくる。そんな分かりきったことを今さら訊くなんて……と。
冷暖房完備のブーブーは、夏熱くて冬は冷たい。それでも私たちのお気に入り。他の子に乗り換えようなんて、これっぽっちも思っていない。
「二人でならどこまででも行けちゃうよね」
「そうねぇ、貴女はこの子とならどこへでも行っちゃうわよね」
軽い調子で返されて、思わず首を引っ込める。
「ま……まぁそれは……うん、そうねぇ……じゃなくて、私はよーことどこまででも行っちゃいたいの」
冗談だって分かっているから、こっちも軽い調子で言葉を返す。「うふふふふ……」と微かな笑い声が耳を撫でていった。
きっと今、君はこっちを見て、笑ってくれているんだろうね。
その顔を見つめていたいなぁ……なんて、思っているけど、実行したら「危ないから前を見なさい!」って叱られちゃうんだ。……ちぇ、ずるいなぁ蓉子だけ。
「聖」
不意に呼ばれてハッとする。
「疲れたら言ってね。運転、換わるから」
優しくてあったかい声が耳をくすぐった。思わず口元が緩んじゃう。
「うん。でもまだ大丈夫」
今日の目的地はそんなに遠くはないけれど——
——ブーブーに乗って二人でなら、きっとどこまでも行っちゃえるって。
ほんのちょっぴりアクセルを踏み込む。フオン……と吐息のようなエンジン音が聞こえて、ブーブーは緩やかな傾斜を登りはじめる。
切り通しの空が行く先に伸びて、私たちの行くべき方向を指し示している。