ぼえぼえ―お道楽さま的日常生態

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まぁ、いわゆる雑記。

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「知らない場所のはずなのに、どこか懐かしい気がして立ち止まる」で始まり「静かで優しい夜だった」で終わります。
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 では、どうぞ。
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 アタシたちが駅の外に出られたのは、もう街が寝静まったあとだった。
 これはまぁいたしかたない。規則だから。
 目的地まではのんびり歩いて十五分くらい。夜中とは言え、できるだけ人間に見られないよう、近道でもある裏路地を急ぎ歩く。
 右側からすぅっと冷たい風を感じてそちらを見る。横を歩いていた武蔵がいない。立ち止まって振り返ると、五歩ほど後方で、不思議そうな顔で背の高い塀を眺めていた。
「どしたいどしたい?」
 戻ってそう訪ねると、武蔵はゆっくりこっちを向いた。
「……知らない場所のはずなのに、どこか懐かしい気がする……」
 おやまぁ、とアタシは肩をすくめ、なるほどね、なるほどね、と得心する。でも口から出た言葉はちょっと違ってた。
「気のせいじゃね? 長崎来んの、初めででしょ?」
 右手を伸ばして武蔵の左手を取り、ちょっと強引に歩き始める。武蔵が後ろ髪を引かれながら付いてくる。繋がった手にほんの少しの抵抗。
(ごめんな。オマエさんのそれ。気のせいじゃないよ)
 心の中でそっと呟く。
 目的地にはアタシたちが駅を出た時刻の報告が行ってる。あんまり遅いとあらぬ疑いをかけられて、提督に迷惑がかかっちまう。
 目的地に着いて、提督に頼まれたおつかいものを渡したら話してあげる。
 オマエさんが立ち止まった塀の向こう。そこは艦の時代にオマエさんが建造されたドックがあるんだわ。アタシはその横のドックで建造されたんだわ。
 ひゅぅっと吹いたビル風が、海軍のロングコートの上からでも冷たかった。ぶるっと身震いすると、武蔵が繋いでいる手をきゅっと握り返してきた。
 できるだけ足音がしないように、ひたひたと急ぎ歩く。夜中の長崎。誰も居ない裏路地。あったかい武蔵の手。
 静かで優しい夜だった。



       ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 大層な大間違いをやらかしていたので、舞台を変えて書き直してみました。
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