ぼえぼえ―お道楽さま的日常生態

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まぁ、いわゆる雑記。

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 そんな与太話をしている間にも、海は静まる気配どころか波の上下運動は現在進行形でさらにひどくなっていく。カワチもヒナセも海軍生活がそれなりに長いので、多少の激浪くらいでは船酔いなぞするはずもないが、それでも大きすぎる波のうねりに艦が乗ると、三半規管がときどき悲鳴を上げそうになる。揺さぶられ続けるのにも限界はある。人間だから。
「司令官。救命胴衣の着用を進言します」
 カワチ少将の声に、ヒナセは小さくうなずいた。
「進言を受け入れます。艦隊総員、救命胴衣着用」
「了解しました」
 艦娘にも救命胴衣を付けさせるのは、うっかり接触事故を起こし実艦形態が解除されたのみならず、艤装が故障した場合を考えてのことだ。旗艦『鳳翔』が事故れば、下手をするとヒナセもカワチも海に投げ出されてしまう。このくそ寒い荒天の中、海に落ちれば救命胴着があったとろで無事ではすまされないだろうが、付けていないよりは、浮力があるぶん助かる見込みがないわけではない。要は艦娘たちが助けに来てくれるまでの時間稼ぎができればいい。そしてそれは、助ける対象が艦娘であっても同様である。艦娘は人ではないので水中でもかなり長い時間の生命維持が可能だが、それでも限界はある。艤装が能力不能となったとき、彼女たちは自重がゆえに浮くことができず、ある深度以上沈むと回収はまず不可能になる。艦娘が見た目のイメージや同体格の人間よりもはるかに重いのは、『艤装を内包しているからであり、それを支えるための筋肉密度が人間よりもはるかに高密度だから』と言われているが、そこは最高機密に属することなので詳しいことは分からない。ただ『浮力なんか意味がないほどに重いから、素体のまま水に落ちれば沈むしかない』のだ。
「各艦へ伝達。艦隊総員、救命胴衣を着用せよ。くりかえす。艦隊総員、救命胴衣を着用せよ」
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