ぼえぼえ―お道楽さま的日常生態

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まぁ、いわゆる雑記。

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 この一文で、階級上同格の作戦司令長官とその幕僚団を黙らせるのだから、さすがは上級軍族・浅香家の人間である。しかしその部下であるヒナセたちは「しょせん軍族の腹とか背中にくっついているコバンザメ」くらいの認識と扱いでしかない。腹は立つが事実である。多くの佐官を輩出している中級軍族のカワチですらそうなのだから、農家出身のヒナセなんかは、ミジンコくらいにしか思われていない。
 自分の基地やアサカの元にいれば気が付かないことだが、こうして外の組織に紛れ込むと、血筋や出身が大きく物を言い、階級や組織内の地位(こう見えてもヒナセは分基地司令官で、場合によっては作戦司令長官よりも立場が上になったりもするのだが)ですら軽視されることを実感せざるを得ないのだった。

 さて、船倉が空になった補給船団を戦闘海域外までエスコートしていったカワチ提督の第二戦隊は、編成数が半分以下になって戻ってきた。ヒナセの第一戦隊に合流したのち、カワチ提督は、ヒナセ艦隊旗艦に移乗した。半分は作戦会議がやりやすいように、半分は沸騰したヒナセ司令の緩衝材――つまりはお目付役である。この時点で旗艦は『鳳翔』に戻っている。
 作戦海域の隅っこのほうで残留待機に入ったが、何かあったらすぐさま逃げ出せるよう陣形を組み、警戒を厳とし、見張りをいつもよりも多く配置した。戦闘に巻き込まれるだけ損にしかならないのに武勲を取りに行こうなんて矜持や無謀さは、ヒナセもカワチも持ち合わせていない。『被害はできるだけ最小限に』が作戦骨子であり、艦隊行動のモットーである。
 そのうちに作戦総司令部から、戦闘不能で漂流しているだろう艦娘の救出や、出るかどうかも分からないドロップ艦の回収をするよう命令が下った。ヒナセ基地の主任務は『傷ついた艦の修復とリハビリ』なので、本道からそれた話ではないのだが、とにかく作戦総司令部の態度が気にくわない。戦闘行動をほとんどしない基地の艦隊なんか足手まといだ、という総司令やその参謀たちの感情が、声からも態度からも命令そのものからもだだ漏れである。だったら補給任務が終わった時点でさっさと佐世保あるいは鹿屋に帰投させてくれればいいのに、それはダメだとべもない。全作戦終了時に艦隊の頭数がある程度以上そろっていないと昇級査定に響くもんだから、ヒナセ艦隊を無理矢理残して、さらに自分たちの邪魔にならないよう、文字通り『拾い仕事』をさせようとしていることは、火を見るよりも明らかだった。

 そんなワケでヒナセの機嫌は『悪い』を通り越して『怒髪天』すらも通り越している。
 カワチ提督はいつも以上にニコヤカでスマートな態度を貫いているが、これはきっとヒナセが怒りきってるからあえてそうしているだけで、打ち合わせ中に多少の毒が漏れたりしているから、きっと同じくらい、いやもしかしたらヒナセ以上に煮えたぎっているのかもしれない。なんにしても有能な部下である。階級は一緒だけど。
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