ぼえぼえ―お道楽さま的日常生態

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まぁ、いわゆる雑記。

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「……寒いのは苦手なんだよ」
 ヒナセはウール百パーセントな軍用コートの立てた襟の中に首を引っ込め、ウール百パーセントなマフラーの中にも埋もれて、鼻からたれてきた水をズビ…とすすった。
 こういう時にカワチが軽口を叩くのはいつものことなのだが、今日のヒナセの機嫌は、その程度では直らない。この海域に来て以来ずっと、怒りと不機嫌でアタマが沸騰しっぱなしだから、無理もない話なのである。


 一週間ほど前、ヒナセがのほほんと基地内の菜園で豆苗(まめなえ)の植え付けをしていた時に緊急電が入った。発信地は本部基地の鹿屋。曰く『できるだけ練度の高い、しかし小艦編成で、さらにカワチ少将の艦隊込みで至急来い』との命令だった。これが話の始まり。
 もっともこれは、冒頭部分どころかタイトル文字が飾られる前の、献辞の部分でしかなかった。

 鹿屋に着くなり護衛任務の命令を受けた。目的地は佐世保。なるほど護衛任務ならば小艦編成はうなづける。じゃ、カワチ艦隊の主艦である妙高型四隻はどうするかと訊けば、そのまま一緒に護衛任務に就けという。最初に不審感を抱いた瞬間だったが、命令には逆らえない。まぁいいかと、艦隊の編成変更もそこそこに、補給船団の護衛(補給船団と駆逐艦たちが重巡四隻の護衛みたいに見えたのは、ここだけの話だ)をして佐世保に行ってみると、さらに大量の補給物資を積んだ多数の船が待ち構えていた。編成内容はともかく艦数だけはちょっとした艦隊並みに膨れあがった補給船団を、手薄ながら護衛しつつ指定海域まで来てみれば、現地はめまいがするほど素敵な消耗戦の真っ最中で、後方からの補給を今か今かと待ち構えている状態だった。
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