ぼえぼえ―お道楽さま的日常生態

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まぁ、いわゆる雑記。

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 できれば早々に海域を離脱して、少しでも海の状態がよいと思われる方向に待避したいところなのに、この場に留まり待機するよう命令されている。
 艦橋の窓から見える自分指揮下の艦たちが、激浪に翻弄されて上に下に左右にとうねり、必死で海面にしがみついているさまが波の間から見え隠れしていて、実に心許ない。艦と艦の間隔はかなり広くとってあるが、いつ不意に流されて艦同士が接触するか衝突してもおかしくない状況だ。小さな艦ほど流されやすいのだ。
 ヒナセが指揮する艦隊の主隊は、旗艦である軽空母『鳳翔』を筆頭に、軽巡二隻と駆逐艦が三隻の小艦編成で、練度も旗艦以外はさほど高くない。そもそも戦闘行動に参加するための艦隊ではないし、基地自体が戦闘行動を主とした基地ではないから仕方がないと言えば仕方がない。
 だのに、だのにだのに……
「なんでこんなトコに出張しなきゃならないんだ……」
 呟いてから、自分のやや斜め前、十一時の方向に立っている艦隊副司令のカワチアキラ少将が涼やかに微笑んでいるのに気がついた。彼女はこの激浪の中、平気な顔をして立っている。艦が突然大きく揺れれば転倒しないよう右に左に前後にと足を突っ張る仕草はするが、その動作は彼女自身と同様に華麗でスマートだった。
「まぁまぁ。この揺れを頂戴しているのは我々だけじゃない。あっちで戦っている連中は、もっと悲惨なことになっているだろうよ」
 カワチは制帽のひさし越しに、軽くウインクを投げてよこした。そんな余裕綽々の態度に、思わず「チッ」と舌打ちが出る。
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