2014.04.07 Monday
「そうですか……では、行きましょう。いい頃合いだと思います。……志井さん。場合によっては……」
「……はい。用意しておきます」
志井さんは久世さんを気遣うようにのぞき込み、それに対して久世さんはゆっくりとうなずいた。
私と言えば。どれくらい一つ屋根の下で暮らしたら私と蓉子もこんなふうに阿吽の呼吸みたいな会話ができるようになるんだろうか……そんなことをぼーっと思っていた。
「聖さん」
「はっはいっ!」
まさかこのタイミングで声をかけられるとは思っていなかったので、おもわず飛び上がった。しかし久世さんはのんびりとこう言った。
「志井さんの指示があったら、宿坊にお茶を持ってきて頂けますか?」
「は……はぁ」
でもいいんだろうか。なんだか向こうのお客さんはかなり訳ありな感じなんだけど。そう久世さんに告げると、金髪のお坊さんはゆったりと笑って大丈夫ですよ、と言った。
「……宿坊にいらしてる方はね、誰かに話を聞いて欲しいと思ってる方なんです。この寺をわざわざ訪ねてくる人は、ほとんどがそうです。自分の話を誰かに聞いてもらって、自分の味方になってほしいと思ってる人たちなんです。だから、たぶん大丈夫です。
判断はもちろん私がやります。合図を送りますから。
大丈夫じゃないときは……こう。……大丈夫なときは、こう……」
久世さんは、ごくごく簡単で、さりげなく、かつ分かりやすいサインを二つ示した。簡単に言えば、一つは左手で左耳上の髪を撫でつけるしぐさ、もう一つはやはり左手で、右肩から肘あたりまでをなで下ろすしぐさだ。腕を組むと見せかけてからやるので、とても自然に見えた。