2014.03.23 Sunday
「キュウちゃんが大人しすぐっとたい。まぁ偉か坊ンさんやけん、俺(おる)らみたいんにがさつじゃいかんとやろうけんがねぇ」
カメさんは「がはは」と「ぎゃはは」の中間みたいな声で笑う。
「偉くはないし、上品でもないですけどねぇ」
「おう、知っとぉばってん、べっぴんさんの前やきスカしとるっちゃろ。ユカちゃんからあとで怒らるっバイ」
カメさんがさらにがははと笑った瞬間、久世さんの裏拳がカメさんの正面に飛んで見事にヒットした。あまりの速さに何が起こったのか一瞬わからなかった。カメさんが後ろによろけてから額を押さえて体制をたてなおす。
「……嫁ちゃんから怒らるっば~~い……たた……」
カメさんが言い換えたので、志井さんを名前のほうで呼ぶのはしないほうが良さそうだと内心思った。というか、久世さんの意外な一面を見た。気がしたじゃなくて、確実に見てしまった。
「で、修理はどのくらいかかりそうです?」
久世さんはしれっと話を元に戻す。
「ほうなぁ……部品の届き次第かな。今から注文して明日ン午前中に入ったら運が良かち程度やんね」
カメさんは額をごしごしこすりながらながら言った。
「……ですよね」
そう言って、久世さんは懐から手帳を出してぱらぱらとページをめくり始めた。