2014.03.05 Wednesday
通されたところはたぶん居間だった。客間とか座敷とか、そんな雰囲気じゃなく、すっきりと片付いてはいるけど生活感の大いにする畳の部屋。
中央には竹っぽいラグが敷かれ、その上にこぢんまりとした丸いちゃぶ台がひとつ。年代物っぽく、よく手入れがしてあるらしく、黒っぽくピカピカ光ってた。ニスとか塗料とかの光沢じゃなくて、拭き上げられた光沢っていうのかな。そんな感じ。
あとは小さなテレビがひとつ。木の戸棚がひとつ。これも拭き上げられてつやつやしている。戸はガラスじゃなくて、本体と同じ材質の格子。格子の向こうが見えなかったから、裏に何か貼ってあるのかもしれない。
ちゃぶ台には座布団が三つ添えてあったけど、一つは場にそぐわない感じでつくねんとしてたから、たぶん私が座れるように別の部屋から持ってきたのかもしれない。その証拠に、私が座るようにしめされた座布団は、まさにそれだった。
「いつもなら、志井さんが美味しいお茶を入れてくれるんですが、今日はちょっと手が混んでいるみたいでして」
そう言いながら久世さんは、お茶をいれて菓子をすすめてくれたあと、そのまま座ることなしに一礼して、
「では、少々お待ち下さい。ちょっと着替えてきます」
部屋を出て行った。
久世さんが着替えるあいだ、ここに一人でいるくらいはわけもない。テレビを付けましょうかとも言われたが、もともと見るほうでなし、それはご辞退申し上げた。というか、この部屋はすごく気持ちがいい。落ち着くというかなんというか……そう、同じゼミの加藤景の下宿部屋に似ている。置いてあるものとか間取りとかじゃなくて、雰囲気が。
…ちりも積もればなんとやら…ですねぃ(w。