2010.10.31 Sunday
「学生さんですか?」
話の接ぎ穂だろうか、女性は当たり障りのないことを訊いてきたので、私も当たり障りのない返事をした。
「ええ、そうです。ところで……」
私は先ほどから気になっていることを訊ねてみた。
「失礼ですが、もしかしてあなたはお坊さんですか?」
そうなのだ。いわゆる僧侶の作業着と言われている作務衣姿で素足に草履。作務衣は若草色でオシャレな感じがするけれど。私がよく知っているお坊さんは、家では濃い灰色の同じものを来ている姿をよく見ている。……と言っても数回程度だけど。
「ええ。そうです。お分かりになりますか?」
女性は正体を見抜かれた(?)ことが嬉しくて仕方がないという顔で、にっこりと笑った。
「高校の時の後輩の家がお寺さんで。その子のお父さんがご自宅で着ているのを何度か見たので。」
私はリリアン女学園高等部時代の“妹”だった藤堂志摩子の父親を思い浮かべながら言った。小寓寺住職のファンキーさは今も健在である。春先に志摩子の“妹”だった二条乃梨子ちゃんが無事に進学し、そのお祝いを志摩子の家でやるというので小寓寺に行ったら、住職がらみで素敵な体験をしたのは記憶に新しい。
「ああ、なるほど。あ。そういえば、自己紹介してませんでしたね。」
その言葉を聞いたとき、「あ。ちょっと面倒くさいな」と頭をかすめていった。相手が自己紹介をしたら、こちらも名前を言わなくちゃいけない。それは旅先で多少袖ふれ合う程度の縁なら、ちょっと面倒だ。しかし相手はそんなことは思ってないようで、さくさくと言葉を進めてきた。
「私は、佐藤久世(さとうきゅうせい)と申します。あなたがおっしゃった通り、坊主をしています。」
やっと名前が出たよ、和尚さん。
ちなみに、この坊さんの本名は、『久世(ひさよ)』さんと言ったりします(ぉ。