2010.10.30 Saturday
私は新聞が退いたところに現れたイスに座った。
「ここにいたら、もしかしてあなたが見つけてくれるのではないかと思いましてね。」
女性はニコニコと笑いながら言う。つまりは、私を待っていたということだ。立ち去らなくて正解だったというわけか。
「……どうしてそう思ったんです?」
私は疑問をそのまま口にした。
「なんとなく……ではダメですか?」
「私もなんとなく立ち去れなかったので、ダメじゃないです。」
「そう。それは良かった。」
なんとなく、私たちのあいだにほんわかした空気が流れた気がした。
私は今、周りから、気さくな性格でつき合いやすい人間だと思われているけれど、本来どちらかと言えば人見知りで、たいがいにおいて『最初の一言』は社交辞令的であることが多いし、それすら発せない相手とはなかなかうち解けることができなかったりする。しかしこの目の前にいる女性は、ハプニングがきっかけとはいえ、ハナからほぼ素で喋ってしまった。
『素』もいろいろ持っているけど、蓉子や“でこちん”江利子と接する自分と言えばいいだろうか。とにかく取り繕うヒマもなかったことだけは確かだ。
だからだろうか、この、ある方向から見れば充分に胡散臭(うさんくさ)金髪坊主頭の女性に対して、警戒心が薄いのだ。……まぁ、胡散臭いといえば、江利子いわく「アメリカ人」の私自身も、この女性から見れば充分胡散臭いのかもしれないけれど。
今、はた目から私たちふたりを見ると、充分胡散臭い。……間違いなく。
明日で関西出張の仕事は終わりです。
仕事は(ぉ。