2010.09.26 Sunday
間近でみるそれは、ピカピカ光っていて、思ったよりも小さくて、私をいっそう虜にした。
――これは買うしかない。今ツバつけとかないと、きっと一生後悔する。
そんな考えに囚われていたのだ、その時は。もちろん今も、そう思ったことは後悔していない。
なんだか気持ち悪いくらい安かったが、さりとて自分の貯金だけでは即金で買える金額でもない。私は仮契約をしてその足で実家に戻り、父に相談をした。ローンを組むには保証人が必要だったから。
父は話を聞くと、そのまま私を車に放り込み、その中古車屋へ直行した。私が指し示す車を見るなり「う~~~~ん……」とかなり渋い顔をした。そしていきなり即金で買った。
面食らう私を尻目に、父はETC装置やらなんやらのオプションを取り付ける手続きをし、納車前整備をきっちりするように店に約束を取り付けた。それから私に向かってこう言った。
「ここまでは買ってやる、しかしあとは自分で賄(まかな)うこと。」
まったく、父親というのは娘に甘い。……と思ったら、もう一つ条件が付いてきた。
「進学できなかったら、私の私用車にする。合格したら、そのまま入学祝いだ。それまで名義は私にしておく」
……マジですか?
私は来年の春に、蓉子が通う大学の大学院に進学することを希望していた。決めたのは昨年の暮れあたりだ。(ちなみに蓉子も院に残るため、現在猛勉強中だ。)
それを条件に持ってくるとは。父親とは一筋縄ではいかない生き物らしい。
……て、待てよ?